本はなかなか捨てられません
しかし、溜まりにたまると居住空間に危機を感じる様になります
そこで、時々整理が必要となります、そんな作業の中で
懐かしい本に出くわすと、ついついページをめくってしまいます
そんな大切にしている季刊誌があります
最近は殆ど買わなくなりましたが
35年も前に出版された「銀 花」という季刊誌です
この雑誌の存在を姉から教えられ1971年の冬「第八号」を手に入れたのが最初です
それから1977年の春「第二十九号」までがまだ手元に残っています
二十歳からの六年間の私の驚きと感動がこの中に詰まっているようです
ちょっと引っ張り出して開いてみると
まったく古びた印象は無く、遠い思い出と一緒に素晴らしい美の世界が広がります
この「銀 花」という季刊誌は1970年春創刊された、日本の工芸美の再発見的な季刊誌です
ともすれば新しい方向のデザインやアートへの関心が強かったその頃
この季刊誌の美しさは私にとってかなりの衝撃であったと記憶しています
それは私が金沢の学校に入ったばかりの頃でしょうか
その頃父は魯山人の器に傾倒しよくその話しをしていました
そんな時、姉から「銀花」に魯山人が特集されてるよ、との情報を得てちょっと本屋で立ち読み
それが私とこの本との出会いでした
「第八号」冬は「特集-1」として「日本の菓子」として各地の干菓子をはじめ美しい和菓子、
「特集-2」として「魯山人の芸術」として魯山人の器の写真が並びます
そして「漱石の本」、それまで殆ど興味の無かった「本の装丁」が眼の鱗を落とします
憧れの「杉浦康平」氏の新鮮な表紙デザイン、そしてその素晴らしい写真を通して
私の中で忘れてきた「古き良き日本の美」が衝撃をもって私を虜にしたのです
このとき初めて美しい物との出会いを実感したように思います
そして友人達とこの雑誌を傍らに、熱く語り明かした事も懐かしい思い出です
富本憲吉を知り、浜田庄司、河井寛次郎、バーナードリーチを知り
柳宗悦にのめり込んだのもこの頃だと思います
今の私の器好き、骨董好きはどうもこの辺に起因しているようです
それ以来この雑誌によって様々な「美の世界」を知る事ができました
また、近くに「ギャラリー銀花」ができ、若手の作家達の作品が割りと安価に
手に入れられた事も嬉しい事でした
本棚の一番下の片隅に
そんな懐かしい思い出が
静かに並んでいます
これからもたぶんずーと
最近の「銀 花」は
2006年秋・第百四十七号だそうです