2014年 03月 21日
ここ八ヶ岳の西麓に「乙事」と呼ばれる地域があります 読み方は(おっこと) 現在では富士見町の経営する「おっこと亭」なる蕎麦屋が有名ですが・・・ 「乙事」、非常に変った名前ですね 宮崎駿監督の山荘が直近くにあることから、この地名(小字名)からの発想と伺えます しかし奇妙な小字名です、なにやら曰くありげな小字名ではありませぬか そしてまた直近くには「烏帽子」との小字名もある、「烏帽子(えぼし)」とは高貴な位の方々の正装用の被り物であります そんな高貴な名がなぜここに・・・ 私がこの地に通うようになってから これらの小字名の由来が常に気に掛かっておりましたが 念願の超分厚い「富士見町史上巻」を入手しましたので少しわかるかもしれません 超分厚い本を開いてみます まず、富士見町史の中から 「乙事」に関する事項を抜き出してみますと ■1582年(天正10)徳川家康、北条氏直と乙事に対陣する (乙事陣場 (おっことじんじょう)) 乙事の五味太郎左衛門、家康に属して活躍する ■1656年(明暦 2)稗の底村を廃村 として村民は「乙事」「立沢」に別れ暮す ■1722年(享保 7)乙事法隆寺十一面観音堂 建立 ■1780年(享保 7)乙事村出身の三井透関 、甲州街道の改修を行う ■1811年(安永 9)乙事で諏訪神社の分霊を受ける ■1853年(嘉永 6)乙事村、譲り受けられた諏訪大社上社旧弊拝殿を移築 ■1875年(明治 8)立沢村と乙事村が併合して本郷村となる ■1883年(明治16)本郷村が立沢村と乙事村に分かれる ■1889年(明治22)市制及び町村制施行される 立沢村と乙事村が再び合併して本郷村となる これだけ見ましても 昔からかなり重要な地域とされていたことが浮かんできますね 乙事陣場(おっことじんじょう)は現在「乙事陣場跡」として石碑が立っています この説明文をば拝借しますと 「いまに陣場の小字名を伝える足場溜池の南側一帯は、徳川軍が布陣したところである。 とある 適切な進言とは 「富士見町史 上巻」資料編 一乙骨太郎左衛門覚書 によると 其時太郎左衛門申上候ハゝ、古府中之城ハ悪敷所にて御座候、うしろはせき水寺と申山御座候、南は善光寺の山、北ニハ遊之上之小山、西ハあけたニ而御座候、加様ニ悪敷城ニ而御座候間、御無用可被遊と申上候へハ、其の儀ならハ駿河へ御馬・・・・・ 要約すれば 其の時太郎左衛門が進言したのは、古府中之城(武田氏の館)は良くない場所です。背後はせき水寺(積翠寺)という山があり、南は善光寺の山、北には遊之上之小山、西はあけた(上田 あげた 高い土地にあって水はけのよい田)があります。このように悪しき城なので、古府中之城へ在陣することは無用です・・・・・との進言 この手柄を立てたのが乙事の名主「五味太郎左衛門」であります 結局北条は上州を、徳川は甲斐・信濃を得るという和議が成立、諏訪頼忠は徳川配下となり 頼忠の息子頼水が高島藩初代藩となりました 五味太郎左衛門は、この間の功績によって甲州に拾貫文の知行を拝領し、後になって家康に召し出されて姓を「乙骨」と改め、旗本に取り立てられました 「乙骨」の名が登場 「富士見町史上巻」の乙事村の項を開いて見ますと 乙事村は立沢とともに北部の最も高いところに位置し、標高は1,000mを超える。村内を甲州街道(善光寺道)が通じている。 「富士見町史 上巻」より p687~688 あの凄いエリート一族「乙骨家」のルーツがこの地なんですねー 乙骨一族といいますと、十一代目「乙骨彦四郎耐軒 」江戸後期の儒者 そして、その子であり「君が代」の歌詞選出にかかわったとされる「乙骨太郎乙(おつこつたろういつ)」 またその三男の「乙骨三郎」 は尋常小学唱歌の「日の丸の歌」「浦島太郎」「汽車」「池の鯉」の作詞を手がける そして 2010に亡くなられた、元東芝EMI社長「乙骨剛」 等々、凄い人物を排出いている一族です 横溝正史は病に侵され、この富士見高原療養所 で過ごします その信州を舞台とした小説「真珠郎」に乙骨三四郎という人物が登場するそうですが これもこの地「乙事」からの発想かと かつて乙骨、音骨と呼ばれ 今では、八ヶ岳西麓の小字名に過ぎない「乙事」ではありますが そこには、武田氏、諏訪氏、北条氏、徳川氏、との 密接な関係が秘められていたのですね しかしながら この地がむかしむかし、なぜ、乙骨と呼ばれていたかは まだまだ 謎の中・・・
by takibiyarou
| 2014-03-21 10:51
| 物語
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