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木洩れ日の森から

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2006年 11月 02日

「軽み」のすすめ

時間待ちでふと立ち寄った書店で
ふと手にした本
そこに素敵な出会いがありました

勝見充男 著「骨董自在ナリ」 写真・坂本真典

古美術商の若き跡継ぎとしての著者の「物」に対する想いを淡々と語ります
権威的になりがちな「骨董」の世界にありながら、彼独特の「好みの世界」が素敵です
プロとして本歌の王道を歩きながらも脇道の新しい雑器にも目を向けて同等に愛しむ
芭蕉は「侘び」「寂び」に固執することなく日常の事象に目をむけよ、と「軽み」を説いたと彼は言います
もてなしの席でも「魯山人の織部」の次に千五百円の「好みの器」に肴を盛る、そんな「軽み」がとても素敵です
イギリスのピューター皿(18、19世紀の錫合金の皿)を菓子器とし桃山の本歌の茶碗でお茶を点てる
そこに、李朝の飯椀を茶室にしつらい、釣人の魚篭に花を活ける利休の転用の美意識を感じます、
そんな彼が「水石」の魅力をも語ります
河原の石に自然を見る「見立て」の美意識により、長い年月を掛けて雨水に打たせ育ててゆく「水石」
そんな「水石」の魅力を私はまだ知りません
やきものは伊万里などの磁器物から入り、李朝、唐津などの陶器、そして常滑や備前にいきつくと言いますが、
鎌倉時代の焼き締められた素地にきらめく自然釉のさまは、水に濡れた石の美しさを感じさせると彼は言う。
また古くから「形似よりも神似」とか「実よりも虚を求める」という見方が伝えられ、形に完璧さを求めるのではなく、
見者のイメージの膨らませ方により何かを連想し、それが物の本質に迫る。まさに「見立て」の世界です。

また著者はお茶の師匠のお祝いに名も知らぬ西洋の碗を箱に入れて贈るそうです
美意識の信頼関係のなせる業、レベルの高い楽しみですね

坂本真典氏のしっとりとした写真も素敵な本です
骨董市で二千円の「壊れた蒸篭」を見つけた時の興奮を思い出しました
かなりなレベルの差こそ有りますが、同じような感性に触れた思いがうれしくて
ウンウンとうなずきながら読みました
そして家内に饒舌に語る自分を見つけ、ちょっと照れる思いです。
「軽み」のすすめ_d0082305_619227.jpg



週末は幽玄の森に包まれて

河原で石など探してみましょうか

心地よい読後の興奮をポケットに忍ばせながら




テキレロ
メキシコのショットグラス


2005愛知万博の時にメキシコ館から頂いた
テキーラ用のテキレロと呼ばれるショットグラスです
ちょっと大正ガラスっぽいずしりとした肉厚のガラスが手に馴染み
ついつい飲み干してしまう酔いどれグラスです
新しいものですが濁り酒でも注いでみたい器です

by takibiyarou | 2006-11-02 06:22 | 雑観


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