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木洩れ日の森から

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2007年 05月 21日

空 蝉 の 記 憶

母の煎れてくれたお茶を飲みながら
何か物色してみましょう
空 蝉 の 記 憶_d0082305_4282711.jpg

                                               錫の茶心壷

「清水比庵」の歌を象眼した「器局」(煎茶道具を入れる収納箱)が有ります、いずれは貰い受けるつもりですが
すこし大きくて持ち帰るのを躊躇している物です
なので、今回も中身の物色です古い茶托や茶筒にまじって錫の茶心壷(茶入れ)を見つけました
母の話によると母方の祖父の愛用品だったようです
品格のあるシンプルな形状、しっかりと時代をその燻し色に刻んでいます、手に取るとずしりとした重みが伝わり、落ち着いた気分にしてくれます
その隣に木の葉の茶合があります
煎茶の茶合は仙媒(せんばい)ともいい、竹を二つに割っただけのシンプルなものですが、これはそうではなく趣味の茶合のようです
これを見たとたん、記憶のタイムマシンがまた始動し始めます

大きな火鉢の側に祖父が座っています、その側に一心に祖父の手元を見つめている私がいます
祖父の手には彫刻刀が握られ何か木片を刻んでいるようです
やがて木片は木の葉の姿となり、その元の方の固まりの中から「空蝉」(うつせみ)の姿が浮かび上がってきます
祖父の彫刻刀が空蝉を包んでいた薄皮を剥がしていくように刀先が動くたびにその姿がより鮮明さをましてゆきます、祖父が松材を手慰みに彫っているのです
炭火に飛んだ彫りくずが少し煙を上げ焦げる匂いが漂います、その煙さを我慢しながら茶合が彫られていく様を食い入るように見ている私がいます

目の前に有るのは間違いなくあの時の茶合、それが茶合であった事は後から知った事ですけれど
その時の記憶では白木でしたが、それからの使い込まれた歳月が透明感のある枯れ葉色に変えたのでしょうか
今では見事な琥珀色の茶合です
名品では無いけれど祖父の手になる茶合です
これからも記憶と共に大事にしましょう
空 蝉 の 記 憶_d0082305_419568.jpg

                                                祖父の手になる
                                                  空蝉の茶合
母はまだごそごそと引出しを探しています
その引出しを私も覗き込みますと、隅に折り畳んだ封筒が見えます
手に取ってあけてみると、あら なつかしや
私の中学の校章です、母が取っておいてくれたのでしょうかそれとも父の「けったいな物コレクション」の一部でしょうか、
クラス章は「3E」確かあの頃はHクラスまで有ったと記憶します
今では考えられないほどの人数ですね

古い引出しにはまだまだ思い出が隠れているようで、いつまでもそっとして置きたいのですが、母が少しずつ整理を始めたようです

あまり時間が残っていないとの思いからでしょうか





   

by takibiyarou | 2007-05-21 04:20 | 雑観


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