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木洩れ日の森から

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2007年 09月 30日

妖  し  の  森  ・稗の底

07-9-23
今日は朝から薄曇り
昨日日没のため途中断念した「乙事の森」を歩いてみましょう 、 「稗之底自然探索路」
ゴウ介家と出かけます

「乙事」はあの「もののけ姫」の「乙事主(オッコトヌシ)」の名前のモデルになった地名です
「乙事の森」はその昔「稗之底村」の有ったところ
「稗之底村」はその気候の厳しさ故のたびかさなる飢饉の末、村を放棄し移住しなければならなかった
そんな悲しい歴史の村なのです

稗でさえ底をつく、そんな村だったのでしょうか

そんな「乙事の森」にはたくさんの湧水が今でもいくつかの流れを作っています
そんな流れに沿ってお散歩です

クマザサを分け、ミズヒキの群生を抜け森の奥へと進みます
昼なを暗き鬱蒼の森、そんな森に水音だけが響きます
やがてその水音が一段と高く響き、小さな滝が現れます
永い時を経て、先ほどやっと地上に現れたばかりの湧き水は、その存在を誇示するかのように泡立ち
一気に滝壺に落ちてゆきます
しかしその小さな滝壺は泡立つ水柱を飲み込み、またすぐに元の滑らかな水面に変え
そして、森はその水面に自らを映し、森と同化させてしまいます

少し水遊びしていきましょうか

そしてまた、森の奥へと進みます
森はますますその鬱蒼を深めて行くようです
先ほどからなにやら水音に混じって響く別の音が有るようですが定かでは有りません
おや、変です
先ほどから水の流れに従って森を歩いていたはず
しかしいつの間に流れは反転、知らぬ間に上流に向かって歩いて居るではないですか

どうも先ほどとは違う別の流れかも知れません
ここは「湧水群」、流れがいくつも有って不思議はないはず
そう考えるしかなさそうです
かまわずしばらく進むと少しあたりが開け、広がりに出ます
このあたり、周りより少しひんやりとしているように感じます、湧水のせいでしょうか

鬱蒼の森に忽然の広がり

しかし空は木々の枝で覆われ

そこはやはり、昼なを暗き鬱蒼の森

「東出口湧水地」、懇々と湧き出す水源の様です
石組の泉から静かに流れ出した湧き水はいくつかの岩をかいくぐり
小さな流れを作ります
妖  し  の  森  ・稗の底_d0082305_152026100.jpg

すぐ近くには大きな「虚」(うろ)のある杉の大木

脇には苔むした石造りの祠が一つ

気がつけば先程からの水音は消へ、代わりに別の響きが聞こえています
低く地を這うようなその響き
聞き耳を立てるとその響きは次第に鮮明となるようです
謡曲のようです
謡曲、そうですあの能の謡いです、「俊寛」でしょうか、「敦盛」でしょうか定かでは有りませんが
確かに謡曲のようです、同行の友人もいぶかしげにしています、私の幻聴ではないようです

どこからともなく流れてくる謡いの響き

なぜ、こんな森の中で・・・・

周りを見渡しますが人家らしき影は見えません、しかしはっきりとした謡いの声に違い有りません
誰かこの森で謡っているのでしょうか、それとも遠くの人家からの声が風に乗って流れてきたのでしょうか

妖  し  の  森  ・稗の底_d0082305_15263980.jpg


石組の泉

「虚」(うろ)の杉の大木と

苔むした祠(ほこら)

そして

それを包む昼なを暗き

鬱蒼の森

道具立ては揃っているようです




ポンポンポポン と小鼓 の音

トーンー  と甲高い大皮(おおかわ)の響き

そして 篝火の揺らめき

大杉の陰より「シテ」が現れい出て舞を舞い

切々と悲しい森の記憶を語ります


そんな「薪能」の幻影を観る

そんな「妖しの気配」が漂います

妖  し  の  森  ・稗の底_d0082305_15214576.jpg


謡いはなをも続いています

低くそして更に低く



このままそっと立ち去りましょう

後ろを降り帰らずに



「乙事の森」

妖しの森



「稗之底自然探索路」


2012,8、19 加筆

「稗之底村」の廃村の理由を探し、「富士見町史上巻」の中に下記の文章を発見いたしました

天保十三年、中馬紛争に関する幕府普請方の産物改めが行われた際に、乙事村の役人が差しさした稗之底村の廃村に至った事情として、「地所至って寒く、作毛生立ちかね」、「野山伐り尽くし渡世難儀」など、気候が寒冷で作物の育たないこと、山野を伐り尽くしてしまい出稼ぎの渡世蛾成り立たない事を上げている

また、別の史料によれば、廃村の直接のきっかけは、稗之底の水神社のあたりで「怪異なること」が起こったためであると言い伝えられており、「白きにわ鳥出、屋根に登り、おどしなどいたし候よし」ともあり
当時の人々の間に、薄気味悪い土地と印象を残していたことがわかる
いずれにせよ、廃村当時の直接的な記録が残っているわけではないので、このへんの事情ははっきりとしない

別の史料とやらを見てみたいっものです・・・





稗 之 底 村 関係の項

仮説は仮説のままなのか・・・
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妖  し  の  森  ・稗の底_d0082305_1644465.jpg

東出口湧水地
妖  し  の  森  ・稗の底_d0082305_1646752.jpg

一抱え以上もある杉の「虚」の大木 、 森のご神体でしょうか



あの謡の声は

いったいなんだったのでしょうか・・・・・・













by takibiyarou | 2007-09-30 07:03 | 妖しの森


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