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木洩れ日の森から

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2007年 10月 31日

名 刺 と 肩 書 き

私の机の引き出しにはたくさんの名刺の箱が積み上げられています
別に名刺のコレクションをしている訳ではありません
勿論全部私の名刺です
私のように、次から次に色んなプロジェクトでの仕事をしていますと
どうしても溜まってくるのです
そして、自分の名前の記されている物を、捨てるのも憚られ
次第に積みあがってゆくのです
「名刺」と言えば阿部公房の短編にありましたね
ある日、男が名刺をなくしますが、その名刺はその男に代わって存在し働き始めます
そうなると、その男はいったい何なのでしょうか
名刺は名前が書いてあるので自分の証明が出来ますが、名刺を失った男は自己証明すら出来ません
名前を失った男は存在すら出来ないのです
荒唐無稽なお話ですがなんだか凄くリアル

今日も次のプロジェクトでの打合せなのですが、新しい名刺が間に合いません
仕方なく、前の名刺を差し出し愚だ愚だと言い訳せねばなりません

私が会社員を辞め、自分で名刺を作らねばならなくなった時 、色々と考えあぐねました
出来るだけスッキリとした名刺にしたかったのです
参考にしようと名刺のファイルを開けますと、色んな名刺が出てきます
社名のほか、キャッチフレーズまで入ってるもの、業務項目がほとんど書き並べてある名刺
名前以外はほとんどカタカナの名刺、写真付き、手漉き和紙を使ったもの、中には名前だけの物もあります
一番笑うのが、元何々とか前云々の肩書きの有る名刺
こんなの見ると少し哀れになりますね
確かに肩書きによって相手の態度が変ってくる事もありますので、解らなくもありませんが・・・
私の場合、プロジェクト名、担当業務、事務所の住所、TEL、など連絡方法
これだけあれば事足りますが
しかし、どうしても肩書きのほしい人たちは多いようです
決定権のあるなしの判断も出来るので、あっても一向に構いませんけど

この肩書き、いったい何時ごろから使い始めたのでしょうか
調べてみますと、面白い事が判りました

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まずは三人吉座、
ご存じ「三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)」大川端庚申塚の場
お嬢吉三が「春から縁起がいい」と、悦に入っている折柄、お坊吉三が登場、呼びとめる
こいつも盗賊  
何者か、と問われて

「こりやあ己(おれ)が悪かつた、人の名を聞くその時はまあこつちから名乗るが礼儀、こゝが綽名(あだな)のお坊さん
小ゆすり衒(かた)りぶつたくり、押しのきかねえ悪党も一年増しに功を積み、お坊吉三と肩書の武家お構いのごろつきだ」


また、鼠小僧のセリフのなかでも

「手前達(てめえたち)も直素直(すぐすなお)に貸せといふなら貸しもしようが
勾引(かどわかし)だと肩書をつけられたら二朱も貸せねえ(略)」

ともある


『セピア色の言葉辞典』 出久根達郎 著
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辞書によると
1・ 氏名の右上に職名・居所などを書くこと。
2・ (名刺などで、氏名の右上に記すところから)地位・身分・称号などをいう。
3・ 犯人・容疑者などの前科


いずれにしても

あまり肩書きの多いのも考え物のようですね


名 刺 と 肩 書 き_d0082305_921128.jpg


コムラサキシキブ

by takibiyarou | 2007-10-31 07:54 | 雑観・雑考


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