2008年 01月 22日
今年の初詣は諏訪大社 に詣でました 荘厳な神社に詣でるとなぜか思考は古代へと誘われます この諏訪大社は出雲から追われたオオクニヌシの子タケミナカタを祭る神社だといわれます しかし、追われた神にしてはその影響力の巨大さはどうしたものでしょうか どうもこの神話にも裏がありそうです そんな連想は出雲へと飛び、そして我が故郷「吉備の国」へと向かいます 「吉備の国」は現在の岡山、あの桃太郎伝説のある地方です 桃太郎は「吉備津彦命」、そして退治された鬼の名を「温羅(ウラ)」という 確か、そんなふうに教わりましたでしょうか 現在まで「吉備津神社」には「鳴釜神事」なる奇妙な神事が伝承され そして歴史書に一切記されていない古代朝鮮築城様式による「鬼ノ城」(キノジョウ)は、謎のベールに包まれたままです この桃太郎伝説の大方の見方は、鬼は悪者で桃太郎は正義の味方 果たして本当にそうなのでしょうか 幾多の御伽噺や伝説がそうであるように、歴史は常に勝者・為政者によって創られてきました 表の歴史・伝説です、それに対し必ず裏の歴史・伝説もあるはずです 永い年月に埋められ封じ込められた、隠された物語が どうやら、この桃太郎伝説にも悲しい裏の伝説があるようです それはいつの頃のことでしょうか、朝鮮半島から大きな船が「吉備の国」を目指してやってきました 乗っているのは「百済の王子」、しかし人々を驚かせたのはそれだけでは有りません、それは彼の風貌 「両眼は爛々として虎狼のごとく、茫々たる鬢髪は赤きこと燃えるがごとく、身の丈一丈四尺にも及ぶ」 と「吉備津神社縁起」にも有りますので、もしかすると見上げるような長身の金髪・碧眼の西欧系だったのかも知れません 長旅でその髭は伸び、頬はこけ、目は爛々と光っています 半島での戦いに破れ、当時交流関係にあった「吉備の国」に逃げ延びてきたのです そしてこの船には造船をはじめ製鉄などさまざまな百済の優れた技術者も乗せていたようです 吉備の国はこの百済の一行を温かく迎えます そして半島からの追っ手に備え、朝鮮式の古代山城にならって標高400mの山頂に城を築きます この城はそれまでの城とは違い、周囲に城壁を巡らせ、そばの岩屋山には楯を構えたものです 百済人はこれを「ウル」と呼び、人々はその王子を敬い「温羅(ウラ)」と呼ぶようになります この渡来人のもたらした最新の技術により、吉備の国はたいそう栄えたそうです 吉備高原や中国山地で採れた砂鉄はこの地に集められ、蹈鞴(タタラ)製鉄が行われるようになったのです このことが後の「備前の名刀」の礎となったとも言われています こうして城のふもとに広がる阿曽郷(あそのごう)は鋳物師(いもし)の地となったのです そして「温羅」は阿曽郷の神職の娘・「阿曽媛(あそひめ)」を妻にめとり、吉備の国の首領となり「吉備冠者(きびのかじゃ)」、とも呼ばれました しかし、この地方豪族の繁栄は全国統一をもくろむ大和朝廷にとって決して喜ばしいことではありません 大和朝廷はその勢力拡大のために各地に将軍を派遣する事となります そしてこの地に派遣されたのが「五十狭芹彦命(いさせりひこのみこと)、後の吉備津彦命(きびつひこのみこと)」なのです ここに 戦の火蓋は切って落とされます 武勇に優れた「命(五十狭芹彦命)」は次々と矢を射ますが、ことごとく豪腕の「温羅」の投じる岩に打ち落とされてしまいます 勝負は五分と五分 このとき「命」は「温羅」のあまりの強さに「鬼神」を見たのです そして「命」 は秘策をもってこの「鬼神」に対します それは一度に二本の矢を射るのです、一本はやはり岩に打ち落とされますが、残る一本が「温羅」の左目を射抜きます その鮮血は川(血吸川)を染め、浜〔赤浜)までを真っ赤に染めたそうです 雉に姿を変えて山中に隠れた「温羅」を「命」は鷹となって追います そこで「温羅」は鯉に化けて血吸川に逃れます 勇猛なる「温羅」がここまで逃げ惑うのには訳があったのでしょう、一身に敵を引きつけ、妻や近しい人々を救おうとしのでは無いでしょうか しかし、鵜となった「命」に囚われその首をはねられるのです 人々は嘆き悲しみます、その嘆きに応えるように「温羅の首」はうなり続けたそうです これに驚異を感じた「命」は「温羅の首」を犬に食わせ、御釜殿のかまどの下に埋めるのです、それでも十三年の間「温羅の首」はうなり続けます しかし当時の人々は、新しい支配者に媚び従うしか生きるすべは有りませんでした そして「五十狭芹彦命」は吉備冠者(きびのかじゃ)「吉備津彦命」となり「温羅」は「鬼」となったのです ある夜「命」の夢枕に「温羅」が立ち告げます 『吾が妻、阿曽郷の祝の娘阿曽媛をして命の釜殿の神饌(みひ)を炊がめよ、若し世の中に事あれば竃の前に参り給はば幸あれば裕かに鳴り、 禍あれば荒らかに鳴ろう。命は世を捨てて後は霊神と現れ給え。われは一の使者となって四民に賞罰を加えん』 と 「命」がお告げ通りにしたところ「温羅」のうなりは治まり ここに釜の鳴り具合でその年の吉凶を占う釜占いが始まりました 現在でも「吉備津神社」では「鳴釜神事」が執り行われているようです 後に「温羅」は「吉備津神社本殿」の鬼門〔丑寅)にあたる「艮御崎宮(うしとらおんさきぐう)」に祀られました (このときから丑寅に祭られた鬼は、牛の角を有し、虎皮のパンツをはいているのでしょうか) 現在も各地に残る「艮御崎宮」の存在は、いかに人々が「温羅」に対し畏敬の念をもち続けたかの証にも思えます そして、もう一つ この壮大なる「吉備津神社」とほんの1Kmほど離れた場所に「吉備津彦神社」があります、どちらも祭神は「吉備津彦命(キビツヒコノミコト)」 なぜ なぜ、こんなに近い場所に同じ人物を祭らねばならないのでしょうか 「吉備津彦神社」は単純に吉備津彦命をお祭りしていますが、他方「吉備津神社」は祭神は勿論のこと、討たれた鬼おもお祭りしているのです、そして「鳴釜神事」までも もしかすると、人々の 本当にお祭りしたかったのは 「鬼」とされた「温羅」の方だったのかもしれません なぜだか、そんな気がしてなりません もう一つの桃太郎伝説 悲しいき鬼の物語 参考にさせていただいたサイト 「鬼に出会う。吉備路」 「古代国家吉備の謎に迫る」 「吉備津神社縁起」 「古代吉備王国の旅」 「鬼ノ城」 「鬼ノ城の復元」 「吉備津神社」 「鳴釜神事」
by takibiyarou
| 2008-01-22 06:11
| 物語
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